バンブー教室:バンブーだより3月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3(1)

2026年4月2日

3,発達障害傾向の学力不振の本当の理由とは

以前に講演もしていただいた星槎大学副学長の西永先生は、その著作「子どもの発達障害とソーシャルスキルトレーニング」で、「ソーシャルスキル」のスキルは「技能」ではなく「学習性の能力」であると述べています。LDやADHDなど発達障害の傾向がある子どもたちの「ソーシャルスキル」や「コミュニケーションスキル」および読むこと、書くこと、聞くことにも関係している「アカデッミク・スキル」は学習や練習の結果で大きく変わってくると書かれています。

「発達障害がある生徒の場合は特に発達の偏りに配慮して、その子どもの現在の能力に見合ったできる課題を用意して結果を出すことが大事であり、結果が出ないのは教えるプロセスが間違っているのです。子どもはできるから練習を頑張れるのであって、できないから練習が苦手なのです。不登校の理由である無気力は学習におけるプロセスの問題です」と講演会で西永先生はお話しされていました。

発達障害の特性としてADHD(注意欠如多動症)で見られる集中力や持続性のつまずき、ASD(自閉症スペクトラム障害)で見られる興味の偏りやこだわりが、学習に取り組む上で大きな障壁になってしまいます。そして、それこそが学力不振につながる大きな理由の一つだと思います。このような子どもたちは、苦手なことや興味がないことには極端に意欲がなくなり、家庭での学習そのものを遠ざけてしまう傾向があります。ですから、不登校が増加する理由としてよくあげられる宿題や提出物などの未提出は、このような特性に大きく関係していると考えられます。家庭でタブレットやゲーム機器が身近にあるような環境があれば、気持ちが興味のあるそちらの機器に奪われてしまいYouTubeで動画を見たり、SNSに興じたり、ゲームでつながった相手との対戦ゲームに興じてしまって、学習を後回しにしてしまう行為は、最近の子どもたちによく見られることです。彼らの場合は、それが習慣化してしまうことで学力不振の原因になっています。

また、学習の基礎となり、情報を処理するために必要なワーキングメモリと呼ばれる認知的スキルが問題になって、学習でのつまずきを生じているケースも考えられるのです。授業に参加することも家庭で学習的な課題を消化することも、漢字の暗記、国語の文章読解、計算、算数や数学の文章題、英語のヒアリングに至るまでワーキングメモリを使わずに学習することはありません。ワーキングメモリは「脳のメモ帳」と言った考え方があります。学習を取り組む順番を決めたり、取り組みやすいプロセスを考えたり、今まで覚えた知識やイメージを重なり合わせて頭で問題の解法を思い浮かべたりするのに役立ちます。さらに、ADHDの特性である気が逸れてしまって勉強に集中しなければいけない時にもワーキングメモリは重要な役割を担います。

宿題などは、ワークシートや宿題のプリントに解答を記述しなければなりません。また問題が書かれた文章をどの教科でも読んで理解する必要があります。その際にワーキングメモリを必要とします。そして、導き出した解答を問題集やノート、プリントに書き込む作業を必要とします。そうなると「読む」「書く」の能力が必要になってきます。最新の限局性学習障害とは、このような「読む」「書く」「計算する」などの力にあらわれることが多く、情報を処理する際の能力の凸凹が関係していると言われています。まさしくワーキングメモリの特性が関与していることが考えられるのです。

潜在的に持っているこのような発達の偏りから生じる凸凹は、彼らの学習意欲や自己肯定感にも密接に関係しているので、置かれた環境がマッチせずに彼らの特性に負荷をかける状況が続いてしまうとADHDの特性である「不注意性」「投げやりな態度」「集中力の無さ」を余計引き出してしまうことになり、学習に取り組むことを阻害してしまう結果になるでしょう。だからこそ学習に取り組ませるプロセスを考える際に非常に重要なポイントになるのです。

もともと記憶とは、健常の人でも20分後に42%、1時間後は56%、9時間後は64%、6日後は76%の割合で忘却しまうものです。忘却を食い止める方法は、一定時間すぎたあとに繰り返し復習するしかないとされています。学習したその日の夜、1日後、3日後、1週後と定期的に繰り返して復習することが不可欠です。皆さんの中で、学校で授業を受けている際に、黒板に書かれている文字を書き写すことが苦手でそのことが心労になっている人はいませんでしたか。その苦手さは、視空間のワーキングメモリの弱さや、感覚統合の問題が起因した不器用性や目と手の協調性などに関係しています。眼球運動にも起因している場合があると言われています。そうだとすると、うまく書けないのは決して努力が足らない訳ではないのです。

実際のところは、懸命に書き写そうとはしていたものの、まだ写しきれていない内に黒板を消されてしまったり、書き写すことの遅さを注意されたりして板書を取ること自体の意欲をなくしてしまった生徒が大半なのではないでしょうか。また、授業中配布されたプリントの説明を先生から受けている際に、何枚目の何番の何項目を説明しているかを聞き逃してしまい、周囲を見ながら必死に話している箇所を探した経験がある人はいませんか。先生がクラスの生徒に対して一斉に話す内容を聞き漏らしてしまうことがよくある人は、言語的なワーキングメモリの弱さがある可能性があります。

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